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翌朝目覚めた時には既に魔女はおらず、彼女付きの侍女マチルダが私を凍てついた目で見ていた。
「レティシア様は公務に行かれました。私がティア様の案内を……」
「ねぇ、私が彼女を殺すと思わなかったの?」
言葉を遮った私に彼女は片眉を吊り上げる。
「レティシア様が来られた時、私達は皆10歳の子供に何が出来ようと侮っておりました。しかし彼女は助けを求める小さな声さえ拾い手を差し伸べてくれたのです。この城の者は皆レティシア様に救われました。だから彼女が初めて望んだ願いがどんなものだとしても叶えたいのです。……危険が及ぶ場合は迷わず排除いたしますが、昨日の貴女には殺意を感じられませんでしたので」
当然監視はされているか。
「まぁ、一応この国育ちだからね。ギフト発現して向こうの国に連れて行かれただけで」
「破棄された友好条約の一つ、ギフト所持者の譲渡ですか」
「そそ、交換ギフト持ちの孤児なんて代償のスペアにもってこいでしょ?」
使えないギフト代表格ではあるものの、限られた用途は存在する。命などの多大な代償を必要とするギフトを権力者が授かった場合、ギフトを譲り受け代償を支払って行使するのが私らだ。
「どうせ死ぬならいい思いしてから死にたいじゃん、家畜の豚より魔女のお姉様の方が良さそうってだけ」
左耳に付けられたタグに触れると、マチルダは何とも言えない表情をしていた。
「魔女ではなくレティシア様です」
「振りはしてあげるけど、馴れ合う気はないのよね」
そうそれは、最後までごっこ遊びに付き合ってあげられない私なりの優しさだ。
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