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あれから一月経った、あいも変わらず魔女は忙しい公務の合間を縫って会いに来る。話をするうちに彼女のことも少し知れた。私と同じスラム育ちで10歳の時にギフトを授かり国に召し上げられこの辺境に派遣されたそうだ。年齢以外は似ているかもしれないレティとティア名前も似てるしねとマチルダに言ったら似ていませんとぶった斬られたけれど。
その日は今までで一番体調が悪かった、頭が割れるように痛いのだ、もう時間切れだろう。
私の未来は10歳で閉ざされた。明日ギフトを使うと言われればそこで私の人生は終了だ。命のスペアとしてただ生かされる日々、私の生まれた意味を神に問いても答えはくれない。
けれど魔女は私をお姉様と呼んでくれた。それが何かの勘違いであったとしても空っぽの私に意味を与えてくれた彼女を愛おしく思った。
もう少しお姉様をやってあげたかったけれどもう無理みたい。
利用価値が低かろうとギフト持ちは野放しにはしない、だから私のタグには一定期間戻らなかった場合に自壊する装置が仕組まれている。朦朧とする意識の中、指先が冷えていく感覚に自分の終わりを悟った。
死ぬ覚悟なんてとっくに出来てると思ったのに魔女の泣き顔が頭を過った。私が死んだらまた泣くんだろうか、あの危うい少女の心が砕けてしまわないだろうか、自分を惜しんでくれるあの子の為に私は生きたかった。
「まだ…わたしは、死にたくない」
最後の望みを口にした、するとどこからか暖かな手のひらが現れ私の指先を優しく包み込んだ。
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