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沈んだはずの意識が浮上していく、徐々に周囲が明るくなり光が溢れた。視界の先で稲穂のように燦く髪が綺麗だ、目を凝らしてみれば澄んだ瞳から涙を溢すレティシアがいた。体はダルいけれど頭痛はしない、だから腕を伸ばして涙を拭ってやる。
「本当に泣き虫ね」
「…おねぇ…さま」
せっかく拭ってあげたのにその瞳から再び大粒の涙が溢れ私に降ってきた。私は死ななかったようだ。そう言えばと耳朶に触れるとタグがなくなっている。
「解析に時間がかかって申し訳ありませんでした」
「貴女が外してくれたの?」
こくりと頷く彼女に鳥肌が立った。私のタグは旧式のパスワード制だけど数回間違えればロックがかかる。破壊すれば繋がれた神経ごと焼き切れるやっかいなものだ。それをいとも簡単に外すだなんて。
「レティ!最高よ!あの忌々しいタグとおさらば出来る日が来るなんて!!」
ばっと起き上がり、彼女の手を取るとくるくる周る。子供のようにはしゃぐ私にレティが目を丸くするけど止まれない、だって私を繋ぐ命の鎖が無くなったのよ。今なら何でも出来そうな気がした。
「ありがとうレティ、あなたが困った時は私が必ず助けるから」
ぎゅっと抱きしめるとその体は小刻みに震え小さく嗚咽をもらした。
「お姉様が目覚めてほんとに良かった……」
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