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自由になった私はお姉様について真面目に考えた。暗記が得意な方ではないとはいえ、流石に彼女のような美人に会ったら忘れないと思う。
別にお姉様がいると考える方が普通なのだが、それもしっくり来なかった。だって不思議な既視感を感じるのだ、それはレティだけではなくマチルダにも、もっと言えばこの城自体に懐かしさを感じていた。
「初めて来た場所なのに可笑しいわね」
そう呟いても違和感は拭えない、何かがおかしい。しかしその思考は突然の来訪者によって途切れた。
「ティア様来てください、レティシア様が!」
珍しく取り乱したマチルダと一緒にレティの部屋へと急いだ。
今朝会った時はいつも彼女だった、しかし今はだらりと腕を垂らし、虚空を見つめている。感情を削ぎ落とした彼女は造り物のように綺麗で冷たい。
「レティ、私が分かる?」
彼女の瞳を見据えて問えば、唇がゆっくり動いて。
「3日目後、神の雷鎚がこの地に落ちます。身の振り方は各自に委ねます」
無機質な声でそう告げるともう言うことはないと言わんばかりに瞳を閉じてしまった。
神の雷鎚の名に周囲はざわめき動揺する。私も何かの間違えではと思った。確かに数年前ギフト所有者が出現したと公表されたが、こんな所で使うのは愚策としか言いようがない。
神の雷鎚を使用してしまえば、民間人を大量に虐殺した国として周辺国から報復を受ける可能性がある。
そうまでして魔女を貶めたいのだろう、国では戦争反対派の王弟を支持する声が高まっていると聞いた。馬鹿らしいことだがありえない話ではない。
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