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この日私は初めてベリーパイを焼いた。マチルダに手伝って貰ったが端々は焦げて形も歪だ。
それをレティの前でぱくりと食べる、当然反応はない。誰かのために作った料理を一人で食べるのは虚しい、けれどこれが私の最後の晩餐なのだ。
「私は国に戻るわ」
神の雷鎚を止めに行こう、勝算は無いけれどそうしなければいけない気がする。この城に来て一月、誰よりも思い入れは薄いはずなのに私はそれを許せない。可笑しいわね自由を手に入れたはずなのに私はまだ何かに囚われている。
「やはり、そうなるのですね」
血を吐くような憎々しい声がレティの口から溢れ、腕を掴まれる。爪が食い込み、キツく噛みしめた唇に血が滲む。そして憎悪の籠もった瞳が私を見据えた。
「私に何度お姉様を殺させるのですか!?冷たくなった貴方を幾度も抱いて、タグの次は神の雷鎚!巻き戻しても繰り返しても救えない!救われない!!」
「レティ?」
巻き戻す?繰り返す?遂に気が狂ってしまったのと思う反面、一つだけ該当するギフトがある事に気付いた。
「貴女のギフトはもしかして巻き戻しなの?」
「……っ!!」
それは御伽噺でしか語られない幻のギフト、歴史の岐路に立たされた時現れ選択を委ねるという。その代償は命と言われているが、巻き戻るたびに復活する。絵空事のような話だけど私には確証があった。
「私は貴女と会った事ないはずなのに、ずっと既視感があったの。そうよね、そのはずだわ。だってそのギフトは元々私のものだもの」
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