*幸せな犬*

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 青空の下。村のはずれのごみ捨場に狼が群がっている。そこへ、毛皮を着た二人組が駈けてきた。大声で脅して、槍を構えるふりをする。狼たちは恐れをなして、キャンキャン言いながら退散した。  丘の向うへ逃げてゆきながら、何度もこちらを振り返っている。群れを見送り、一人が頭を搔いた。 「弱ったな。あいつら、村の近くに住み着いたらしい」 「寝床に忍び込んだり、子供を襲ったりしないといいんだけど」  夕飯の席で、彼らはこの事を報せた。厄介なお隣さんに、みんなは頭を悩ませた。 「この際だ。不意を突いて巣に攻め込もう。あんな狼、やっつけてしまえばいい」 「奴らは利口だ。人を恨んで、仕返しに来るかもしれない」 「いっそのこと、村ごと遠くへ越してしまおうか」 「昔からあの群れは、我々のおこぼれを漁ってきた。引っ越しても、どうせ()いてくるだろう」  腕を組んで考え込んでいた一人の青年が、顔を上げた。 「試しに、村に住まわせてみるのはどうだろう。狼は賢いし、鼻も利く。狩りに連れてゆけば、役に立つかもしれない」
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