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私の日課は愛犬の散歩をする事なんだけど……お、今日も来た。
「……ふふ」
相変わらずの強面のせい? いや、おかげ? で周囲の人たちはみんな彼をわざわざ避けて通る。
「こんにちは」
「――こんにちは」
彼と会ったのは桜咲くこの公園で、リードが外れて逃げてしまった愛犬を追いかける助けてくれた。
でも、実のところを言うと私も最初は……ごめんなさい。怖がっていました。
ただなぜか愛犬の『リク』は彼を怖がらず「逃げた」と言うより、彼に向って走って行った様にすら思ったくらいである。
「――人懐っこい犬っすね」
なんて言いながらエナメルのバッグを後ろに回し、笑ってリクを撫でるその姿は……。
「――かわいい」
「え?」
「あ、ごめんなさい」
「いや、かわいいっすよね。犬」
正直「リクの事じゃないけど」と言いそうになってしまった。
「う、うん」
でも、さすがに初対面でそんな事は言えず思わず出てしまった言葉を隠す様に慌てて言うと、彼は「そうっすよね!」と言ってまた笑って優しく撫でる。
これがキッカケでその日を境に私は「リクの散歩」と言いつつ彼と話をしたくてこの公園のベンチでちょっと時間をつぶす様になった。
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