プロローグ

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プロローグ

 ――あたしは常々思っていた。「学校で学ぶ意味って何だろう?」と。  だって、みんなと同じように教室の席に着いて、先生が教えたとおりに問題を解くなんてあたしには何の意味もない行為だから。  あたしはすでに高校三年生までのカリキュラムを頭に叩き込んである。つまり、他のみんなのずぅぅぅぅっと先を行っているのだ。そんな中で、みんなと一緒に雁首(がんくび)並べて先生の解き方だけを詰め込まれるなんて()骨頂(こっちょう)だ。こんなこと、無駄以外の何ものでもない。  だからって、あたしはガリ勉キャラってわけでもないけど。  別に学校がキライなわけじゃない。友だちもいるし、勉強以外のオシャレとかメイクとか、流行(はや)っているTVの話をするのは楽しい。入学した高校の制服だって可愛くて気に入っている。男女共学校だし、恋のチャンスもあるかもしれない。  でも、友だちと勉強の話だけはしたくない。みんなが頭悪く見えてしまうから。  あたしは幼い頃から、誰彼構わず思ったことをズバズバ言ってしまう性格なので、それを口に出して言って友だちを傷つけてしまうのがイヤなのだ。  だから、教室で孤立したって構わないと思っていた。誰にもあたしの気持ちなんて分かってもらえないなら、あたしは別の居場所を作ればいい。  でも――、先生はあたしの気持ちを分かってくれた。そして居場所も用意してくれた。……ううん、違うのかな。居場所を作れたのはあたし自身なんだ。    あたしは先生に出会えたおかげで、学校に来るのが楽しいって思えるようになったんだよ。  だって、「学校は勉強を教わるだけの場所じゃない」んだもんね、先生?
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