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ダグラスとの対決
残念な少女に恋したことをどう受け止めていいか迷う武。
武は失意、困惑、羞恥が入り混じった感情を抱えながらもアリスに視線を送っている。その間も、残念なアリスは話し続ける。
「だから、私たちの恋は燃え上がるのよ!」
ロミオとジュリエット効果を武に主張するアリス。
※ロミオとジュリエット効果とは、主に恋愛などにおいて、障害があった方が逆にその障害を乗り越えて目的を達成しようとする気持ちが高まる心理現象を指します。
武はそんなアリスをどう扱えばいいか分からない。
見た目はカワイイと思う。
でも、こういうタイプと深く付き合ってはいけないと雑誌で読んだことがある。
たしか、自己中、被害妄想、メンヘラと書いてあったような気が・・・
このタイプは「この人は受け止めてくれるに決まっている!」みたいな思い込みがあるらしい。だから、アリスの発言に対して武は安易に「そうだね」と肯定してはいけない。
否定しないものの肯定しない、そういう対応が武には求められている。
アリスをどう扱えばいいか分からない武。
そんな武の前にも、アリスの言動に理解できない男がもう一人。
そう、アリスの父ダグラスだ。
「アリス、君の理想の男性は父さんのような男のはずだ。こんな日本人のガキは恋愛対象じゃない。そうだよね?」
「ダディ、私はこの人がいい。総会屋対策は見事だったし、仕手戦も見事だったわ。私はこの人についていく!」
「アリス、早まったらいけない。冷静になろう! 君たちは、まだお互いのことを知らないよね?」必死にアリスを説得するダグラス。
「もう私たちは出会ってしまったの・・・。だから、もう二人の愛の炎は消せない。武、そうでしょ?」
急に話を振られて戸惑う武。
何が正解か分からない。だから、とりあえず当たり障りない受け応えをする。
「そうだね・・・」
武を恨めしい目で見るダグラス。娘が駆け落ちするのではないかと恐れている。
一方の武は、残念な少女の恋愛に巻き込まれてしまった被害者である。
「アリス、一つ提案があるんだ。いいかな?」ダグラスはアリスに尋ねた。
「なに?」
「父さんはこの男(武)を認めたわけじゃない。だから、本当にアリスに相応しい男なのか、父さんにテストさせてくれ!」ダグラスはアリスに提案した。
「どういうテスト?」
アリスはとりあえずダグラスの提案を聞いてみるようだ。ダグラスはテストの内容を説明する。
「まず、テストは真の男を見極めるために3つの段階に分かれている。一つ目は腕力だ。女性を守るためには腕力は必要な要素だ、と父さんは思う」
「そうね。腕力は必要だと私も思う。それで二つ目は?」
「二つ目は知力だ。腕力だけでは女性を守れない。要は、アホでは女性を守れないということだ。女性を守るためには知力は当然必要だ、と父さんは思う」
「分かる! 私もアホはいやよ、アホは。最後は?」
「三つめは運だ。腕力があっても、知力があっても、女性を守れないことがある。上手く時流に乗る能力、物事を成功させる能力、これらは全て運を持っているか否かだ。だから、女性を守るためには運が必要だ、と父さんは思う」
「うーん、たしかに・・・そうかもね」
「だから、これら3つの資質があの男に備わっているかを試させてほしい!」ダグラスは力強く言った。
―― なにこれ? もーやめて・・・
武をよそに勝手に話を進めるダグラスとアリス。
こいつらを無視して全員倒した方が早いんじゃないか?
武は気持ちを切り替えて、ダグラスに対峙することに決めた。
その瞬間・・・
「いいわよ! その代わり、武が三つの試練を乗り越えたら、私たちの交際を認めてほしい!」
アリスはダグラスに言い放つ。
「分かった!」ダグラスはアリスの提案に合意した。
アリスは武に向き直って、大声で言った。
「武、不服は無いわね?」
「別に・・・」
―― しまった・・・
いつもの癖で適当な返事をしてしまった武。
こうして、武はダグラスの3つの試練に挑むことになった。
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