ダグラスの第2の試練

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ダグラスの第2の試練

 勝敗が決定した武に「武、やったねー!」と抱き着くアリス。アリスの平らな双丘が武に当たる。  女の子に抱き着かれてニヤニヤしていたら、ダグラスの冷たい視線を感じた。 「親父、ガン見してるぞー」と言う猫に、「知ってるって・・」と小声で答える武。  武は倒れたアントニオに近づいて顔を軽く叩きながら「大丈夫?」と尋ねた。しばらくするとアントニオの意識が戻った。 「お前、強いなー。俺の負けだ」  アントニオは武に手を差し出す。アントニオに友情みたいなものを感じた武。  武はその手を握り返した。 「おじさんも立派に戦ったよ。そもそも、一度目のダウンの時、あのまま立たなければ良かったんだよ」 「だけどなー、俺にもプライドがあるからな。結局負けたんだけど」アントニオは恥ずかしそうに笑っている。 ―― そんなに悪いやつじゃないのか?  武にはアントニオと戦っていて何となく違和感があった。  ダグラスのルールが武器を禁止しているとはいえ、悪党はいざとなれば武器を使用するはずだ。悪党だったら一度目にダウンした後、二度目になりふり構わず向かってきたりしない。それになのに、アントニオは正々堂々と武と戦った。  周りを見ると、他の黒服もそんなに悪党にも見えない気がした。  武が考えていたら「じゃあ、第2の試練だ!」とダグラスが宣言した。 「どういうルール?」とアリスが尋ねる。 「第2の試練は知力を試させてもらう。ただ、第1の試練のように対戦形式ではない。武、お前がどの程度の知力を有しているかを試させてもらう」  ダグラスはそう言うと、トランプのカードを床に並べ始めた。ダグラスが一人で並べると時間が掛かりそうだったから、黒服と武も手伝って並べた。  床の上には、トランプの表(数字が書いてある方)が見える形で並べられている。 「さて、今からトランプを全て裏向きにする。一人で神経衰弱をして、全て正解すればお前の勝ち、一回でも失敗したらお前の負けだ」 ―― セコイな・・・  ダグラスは第1の試練をクリアされて焦っている。  確かに一般人であればトランプの表を全て暗記するのは難しいのだろう。でも、武はいろいろ改造されているから問題ない。見た瞬間に映像が頭に記憶される。  それにしても、テロリストとは思えない地味な試練だ。もう少しカッコイイ試練はなかったのだろうか?  イチイチつっこむのも面倒くさいから「それでいいよ」と武は返す。  武の返事を聞くと、ダグラスは手下と一緒にトランプを裏返し始めた。少しでも武が表の数字を覚える時間を削りたいのだろう。やる事が姑息な小物だ・・・  全てのトランプが裏(模様の方)を向いたら、ダグラスは「はじめ!」と言った。  武は記憶したトランプの数値から、次々と同じ数字のペアを探し当てていく。  開始から1分経過し、武は半分くらいのペアを揃えたところで、ダグラスが貧乏ゆすりを始めた。このままだと全て正解されると思って、かなり焦っている。  武が次のペアを揃えようと手を伸ばしたら、ダグラスは「ちょっと待て!」と言った。  手を止めた武に、ダグラスは「すまん、すまん。第2の試練のルール説明が完全ではなかったな・・・」と誤った。 「ルール?」 「そうだ。半分正解した時点で、シャッフルが1回行われる。ここでシャッフルタイムだ!」 「え?」 「裏向けたまま、俺がカードを移動させる。移動するのは見ててもいいからなー」  ダグラスはニヤニヤしながらカードをシャッフルし始めた。 ―― コイツ、クソだな・・・  アントニオが正々堂々と戦ったから、実はちょっといい奴かもしれない!?と錯覚した。でも、やっぱりコイツはクソだな。  父としての感情がコイツをクソにさせるのか、それとも元々がクソなのか・・・  武は気のすむようにさせようと思い「いいよ」と言った。  ダグラスのシャッフルが終わり、再びトランプに向かう武。  ものの1分で残りのペアを揃え、武は第2の試練をクリアした。 「第2の試練・・・合格だ」ダグラスは悔しそうに言った。 「きゃー、たけしー」とアリスは叫んでいる。
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