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国内最高峰の魔法使いの育成機関であることを示す金色の刺繍しゅうを施された鉄紺色の旗は、リナリィの起こした風でちぎれんばかりにはためいた。
エルムリッジ城の城壁を四分の三ほど飛んで、城の北側に広がる森の全景が見えた頃、リナリィはグランディールに追いついた。
「やっと来たな。エンデ。途中で曲芸飛空でもやってたのか?」
グランディールが振り返って、ゴーグルとバンダナで覆われた顔を見せた。
「あんたのその下品な布で何言ってるか聞こえないんだけど」
「なんだって」
グランディールは苛立たしげに言った。
「そんなことより、道空けなよ。今からあんた抜いていくから」
「ここは空だ、好きに抜いてみろよ。それに、そんなんでゴールまで持つわけないだろ」
グランディールはリナリィのランタンを指差した。
「無星のくせに。目立ちたがり屋のエンデ。自分のランタンを見ろよ、もう炎が燃えカス寸前じゃないか」
リナリィのランタンで燃える火は、グランディールの三分の一もないほど小さくなっていた。
「そんなんじゃゴールまで箒を飛ばすのだって無理だ。僕がゴールした後に、地べたに落ちたお前を拾ってやるよ」
「なんかごちゃごちゃ言ってるけど、何言ってるか分かんないって」
リナリィは少しだけ箒の高度を下げた。城壁との距離がかなり近くなる。
「道を空けなって言ってんだよ。私が全力で飛べないでしょ」
リナリィがそう言うと、ランタンの中でくすぶっていた炎が勢いを取り戻した。
「行くぞォ!根性入れろ!」
リナリィの魔法をランタンの中の鉱石が炎にし、箒が飛ぶ力へと変える。そうして力を送り込まれた箒は、再び猛スピードでグランディールを抜きにかかる。
「行かせねえ!」
グランディールもランタンの青い炎を燃え上がらせるが、スピードはそこまで上がらない。焦った彼はリナリィの進路をブロックしようと、箒の頭をぐいと下に向けた。
グランディールの箒は主が命じた通り、するすると高度を下げる。
ここで問題が二つ起きた。
一つはグランディールの思っていたより箒の動きが速かったこと。そしてもう一つは、グランディールが飛ぶ先に、すでにリナリィが突っ込んできていたことだった。
結果はあっという間に起きた。
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