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入浴を済ませたあと裸のままベッドに入り、恭平は頭の後ろで手を重ね、美雨は恭平の腋に頭をおいて寄り添って微睡んでいる。
「俺と梨々ちゃんが一緒におるの、やっぱ嫌やろ?」
美雨が体を半転させて起こし、恭平を睨みながら見下ろした。
「それ聞くん?」
「美雨ちゃんが全く興味がないとしても、バリイケメン十七歳と一緒に暮らしとったら、俺、嫌やなって思ってさ」
美雨の眼から鋭さが消える。
「ねえ、ズルくない?」
「え。何が? 思ったこと言っとるんやけど。美雨ちゃんは嫌くない?」
「ノーコメント」
「なんで?」
「たとえ嫉妬ではらわた煮えくりかえっても、それはあたしの妄想やろ? 恭平さんはあの子に興味ないんやろ?」
「ない。でも、俺があの子の父親を見殺しにしたせいで、あの子の人生が狂った。それは事実やし、なんとかしてやりたいとは思っとったんよ」
「でもね恭平さん。あの子の父親もそんな目に遭うような人間やったとよ? それに母親はなんしようと? あの子の人生を狂わせたのは恭平さんやないよ。親よ。親が悪い。それに恭平さん、なんとかしてやりたいって、なんしてやると? 何ができるん? あの子のこと養女にでもするん?」
「それも漠然と思ったんやけど……」
恭平は美雨に視線を向ける。
「長崎におる母親のところに連れて行くことにした」
「居場所わかったん?」
「うん。近々出発するつもりやけど、美雨ちゃんも一緒に来る?」
美雨は一瞬目を丸くさせる。恭平はその表情を猫のようだと思った。
「今月はもう予約入ってるから無理」
「繁盛店でなにより」
美雨が恭平の額を何度も叩く。
「いて、いて、痛いって。なん?」
「悪霊退散」
「なんそれ」
「恭平さんタトゥーあるやん。温泉行くなら家族風呂やね」
美雨の指摘に口を噤む。梨々には言えたことが美雨には言えない。亡き妻と娘に対する後ろめたさが蘇る。
「どうしたん?」
美雨は目敏い。しかし、これは言えない。言わない方がいいこともある。恭平は聞こえないふりをした。
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