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 世紀の大預言者ノストラダムスのお告げは見事に外れ、世界の終わりはやってこなかったが、瀬戸梨々の日常は確実に崩れた。  父親が失踪し、色々なことにだらしない母の光恵のおかげで、学校が梨々の唯一の居場所になった。(とはいえ、父親がいた時も生活基準はギリギリセーフだったかもしれない)  学校には、片付けたそばから食べたもののゴミや、汚した食器をそのままにしておいたり、吸殻を空き缶にいれて放置したり、使用済みのコンドームをビニール袋も張らないゴミ箱に捨てたりする輩はいない。  誰もが一定の距離を保ち、清潔さとある程度の学力があれば、用意されている椅子と机に座って、穏やかに日中を過ごすことができる。梨々はその居場所を守るために必死だった。  幸運なことに、梨々には持って生まれた美貌があった。それを基礎に、制服も体操服も学校で使うものは全て自分で洗濯をし、毎日の入浴を欠かさず、清潔感を醸し出した。母親とその彼氏の騒音に負けず、勉強を怠らず、成績も上位にいた。物静かな優等生という枠を取得し、クラスの中で優遇されていた。
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