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「せやったな。ガキの始末に困ったらワシに言え。なんとでもしたるわ」  龍吾は開いた携帯電話を恭平に投げて寄こした。住所を携帯のメモに打ち込み、ダッシュボードに置く。 「せや、ジョーがな」 「え?」 「は? なんもないわ。お、掃除屋来よった。じゃあの、恭平くん。精々励んで女悦ばしたれや」  龍吾が車を降りていった。一体何だったのかと思いつつ、さっさと車を発進させた。  夜の山道が後暗さを煽り立てる。直接手は下していないが、殺人現場を見てしまった。またか、と溜息が出た。二度あることは三度ある。三度目は自分かもしれないと思い、ぞっとした。あっさりと逃してくれたのは、後日改めてまた何かあるのだろう。日永田がいなくなったそばからまた厄介なのと繋がってしまった。  考えても仕方がない。とにかく、今は一刻も早く美雨のもとに帰ろう。電話をかけると、またすぐに繋がった。 「え。早くない? 明け方くらいになるの覚悟しとったんやけど」 「俺も」 「まだ薬院におるけど」 「なら迎え行くよ。本屋かドトール入っとって」 「うん。わかった」  美雨の声を聞いたら少し気分が落ち着いた。 「美雨ちゃん、ありがとうね」 「仕方ない。スーパーに置き去りにしたことは許してあげる。その代わり、今日は絶対しようね」 「俺にとってご褒美やけど、代わりになるん?」 「今日はあたしのこと、とことん可愛がってよ?」 「うん」 「色々大変そうやけど、今夜だけはあたしのことだけ考えて、あたしのことだけ見てよ?」 「俺が浮気しとるみたいやん」 「よそ見ばっかしとるくせに」 「俺には美雨ちゃんしかおらんけど」 「梨々ちゃんがおるやん……」 「こぶ付きですまんね」 「あ……、いや、そうやなくて……、ごめん……。嫌な言い方した……。あたししかおらんって言ってくれたのに……」 「いや、俺が悪いんよ。不安にさせてごめん」 「ううん。あたしのほうこそごめんね」 「はよ会いたい。電話じゃ埒が明かん」 「気をつけてよ? 飛ばしすぎて事故らんでよ?」 「わかった。じゃ、切るばい」 「うん。あとでね」 「うん。あとで」  電話を切り、今度は静寂が小っ恥ずかしさを煽ってくる。しかし、美雨にあそこまで言わせたのはよくなかったと反省した。自分のことしか考えていなかった。今夜は美雨にかまけよう。調子がいいとは思うが、さっきまでの出来事を思うと、だいぶ精神が削られていた。前を向いたままギア付近に手を伸ばし、手探りで煙草をみつけ、火をつける。もう無意味に先を考えたくない。過去は変えられない。現状はどうしようもない。近々長崎へ行こう。明日明後日でもいい。正直梨々の今後を考えると憂鬱だった。
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