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始まりはあの日から。
「風雅ちゃん!!いつもの頼むよ!!」
「あ!僕はあんみつ一つね、」
「承知しました。」
これは、江戸時代末期の京都にあった、とある甘味処で働いていた少女と、長州の時代を作っていった男たちの物語である。
朝の開店から、この店には人がやってくる。
「風雅。であっているか。」
「はい。小太郎様。」
小太郎、と呼ばれた男はニコリともせず、うなずいた。そんな彼を気にもせず、風雅は落雁を包んだ。
「はい。いつもの落雁です。」
「いつもこんな朝から悪いな。」
そういうと小太郎は暖簾をくぐって出ていった。
すたすたとやや早足で人通りの少ない町を歩く。
しばらく歩くと、大きな屋敷へ入っていった。
やや表情がほぐれたようにも見える。
また屋敷内を歩くと一つの部屋の前で止まった。
「玄瑞、入るぞ。」
「ああ、お疲れ様。」
障子を開け、包を投げつける。
「えっちょちょちょっと、いつもだよね、九一、投げつけてくるの、そんなにお使い嫌い?」
玄瑞と言われた男は投げつけられた包をもろ顔に受けながら言った。
その時だった。
「おお!九一!!おはよう!」
障子がスパーンとあいた。
「桂さん、うるさいですよ。」
「騒がしいな。桂さんの分もあるんだから黙って入ったらどうだ。」
入江と久坂に注意され、しょげている桂。彼の名誉のために言っておくが一応藩の重役である。
落雁を二人でカリカリかじっていると、G並みのメンタルで復活した桂が入江に問う。
「九一、そういえばこの落雁の甘味処はどこにあるんだ?」
「ご自分でお探しください。ちょっと変わった看板娘のいる甘味処はどこと聞けばすぐ教えてくれますよ。」
「新選組に聞いてみてくださいよ、ふふふっ。」
あしらう入江とふざける久坂だが、もう一度言おう、桂は藩の重役である。
あくまでも、入江は藩士ではないし、久坂は家は、医者である。(桂も医者だが、養子に出されている。)
「なっ!!玄瑞、私に捕まれと!!」
「はい。そのまま捕まっちゃってください。」
またしょげてしまう桂を見て満足そうに二人は笑うと落雁を食べ終えた。
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