美談の真実

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美談の真実

「植木職人はまぁいい人だったんですよ。随分とかわいがってもらいました」 「それならなんで人間不信なんかになってんだ?」 「実は、植木職人の家にもらわれるときに渋谷駅前を通ったんですけどね、そのときに僕、運命の出会いをしたわけですよ!」 「いきなり恋愛話が始まった!?」 「惚れ惚れするような毛並みの洋犬が、たおやかな和装の女性に抱かれて渋谷駅から出てきたんです。もうね、あのときは体中に電流が走りました」 「一目惚れってやつだな」 「そこから僕は彼女に一目会いたくて渋谷駅に通い詰めたわけですよ!」 「ちょっと待て!? お前さん、亡き主人を迎えに行ってたんじゃないのかい?」 「やだなぁ、死んだ人間が駅から出てきたらホラーじゃないですか!! なんで僕がおばけを迎えに行かなきゃいけないんですか?」 「お前さん、全米が泣いちまった責任をどう取るつもりだい?」
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