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「ん?えっとキミは」
「初めまして。水野あゆみと申します。
岸野先輩からは川瀬先輩のことよくお聞き
しています」
俺の隣に立ち、水野は頭を下げた。
「岸野先輩推しです」
「あはは。ここにも葵ファンがいるのか。
水野さん、これからも応援よろしく」
彼に微笑まれ、水野は頬を赤らめた。
あ。まさか水野、川瀬先輩にも‥‥?
内心気が気じゃなくなった俺は、
ちらちらと数メートル離れた岸野先輩に
視線を送る。
「もう時間だし、片付けしちゃおうか」
副部長の浅見先輩が立ち上がり、
周りに声をかけた。
「耳栓してる岸野くんは放っておこう」
最後は独り言のように浅見先輩が呟き、
笑いが漏れたところで彼が再び口を開いた。
「油谷くんと、そして急遽だけど水野さんに
お願いがあるんだ」
「え、何ですか」
とぎこちなく答えた俺に対して、
「この後、少し時間あるかな」
「もちろんです!なくても作ります」
食い気味に答える対照的な水野。
「ははは。水野さん頼もしい。ところで
家は船橋方面?それとも津田沼方面?」
「私は夏見在住で、川瀬先輩と同じ中学です」
「偶然だね。中学から後輩だったんだあ」
「俺は西船橋が最寄駅で、そこから歩いて
帰ります」
「皆、近いね。そうか、じゃあうちに来て」
「「えっ」」
水野と揃って声を上げた。
「いいんですか」
興奮を隠せず、水野が問いかけた。
「ここじゃ何だから。うち、駅から近いし」
「わかりました‥‥」
水野がキラキラした瞳で俺を見た。
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