私にはお金が必要なんです!!

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私にはお金が必要なんです!!

「お金が欲しい、千円でいいから頂戴!一生のお願いだから」  かなりの値の張りそうなソファーに座り、わんこ新聞という見覚えのあるおばちゃんに対して、私は何度目から分からない一生のお願いをする。私にはどうしてもお金が欲しい理由を持っている。すると、おばあちゃんが新聞をめくりながら聞いてくる。 「ナナちゃん、そのお金は何に使うのかい?」  私は痛いところを着かれたと思い、無意識の内に眼鏡を掛けているおばあちゃんの視線から眼を逸らしていた。だって、言えるはずもないだろう。お金が欲しい理由は推し活に使いたいからなんて…………。 「別におばあちゃんには関係ないでしょ」  学校ではいつも周囲に気を使っているのだから、家の中くらいは我が儘を言わせろと開き直り、ギャグ切れをして噛みつく私。そんな無様な私を見ておばあちゃんは妥協点を探す様に、新聞紙を閉じて聞いてくる。 「働かざる者食うべからず、犬の散歩を1回するごとに、千円ならいいよ」 「ケチ、学校の理事長をしてるんだから、もっとくれたっていいのに」  私は孫に優しいおばあちゃんではなく、孫に激アマなおばちゃんを求めてるんだと、プイッと拗ねてみる。しかし、おばあちゃんの意思は固いらしい。 「30分くらいの散歩で千円なんだから、時給二千円で割高だと思うんだけどね~」  しかし、ここで私はピンと閃きイタズラな笑みを浮かべる。1回の散歩で千円なのだから、適当にすれば10分くらい済むではないか。そう考えると、かなり効率のいいバイトではないか。そして、前言撤回するのは負けたみたいで嫌だからと、拗ねた顔で答える。 「仕方ないわね。それで飲んであげるわよ」  この大型犬の名前は確か…………まいいや、わんこにリードを繋ぎ、田舎道をおばあちゃんの家が見えなくなった辺りで勝利の笑顔。視界に入ってきた、座られたいと言っているような大きな岩に、頑張りましたと言いたげに腰を落とす。 「よっしゃ~~!あとここで五分くらい時間を潰すだけだ!」  ニコニコな笑顔でスマホをいじり始めると、誰かの声が聞こえてくる。 「おいコラ!バイトとして金を貰いながら働いてんなら、もっと俺に気を使えや!俺はお客様みたいなものだぞ!」  え?誰の声と周囲をキョロキョロしても、見えるのは見晴らしのいい景色に広がる緑豊かな田んぼと自然。車1つない人の気配を感じさせのない静かな空間。 「こっちを見んかい!」  イッタ……くない?思いっきり足をぶっ叩かれる感触、それはぷにぷにの何かがぶつかってくるような柔らかい感触。足元を見ると、わんこがこちらを睨みつけながらしゃべっていた。 「お客様は神様やで~~」  何なのよ!この犬前世は絶対クレーマーでしょ!ていうか。 「犬がしゃべった~~~~~~!」    
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