犬が喋る奇妙な動画?

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犬が喋る奇妙な動画?

 キラキラにダイヤモンドのようなシールでデコレーションされた、スマホを片手に私のことを指さして笑う彼女。サラサラの金髪を縦ロール巻いて、吸い込まれてしまいそうな輝く水色の瞳で見下す彼女こと、マリアから絶対的な自信を感じる。童話で出てきそうなアリスのような服装の彼女、対する私はTシャツに短パン。私よりもあなたの方がカースト低いでしょ、そういうかのように、腕を組み私と同じく位の身長なのに見下してくる。 「ナナ車掌さんは暴走機関車ですわね、私がお上品な運転(さんぽ)の仕方を見せて上げましょうか?口調も行動もガサツだから、ワンちゃんも男の子も寄ってこないのですわ」  自分の大きな胸を強調するように体をのけ反る。悔しいことに胸もクラスに与える影響力も彼女の方が断然大きい。だから、私は自分よりも大きい存在を前にして、縮こまってしまい、いつも通りマリアのご機嫌取りをするはずだった。しかし、今日の私はイライラ全開でリードを握る手に力が入り、爆発寸前の爆弾のように頬を膨らます。一歩間違えれば、クラスのいじめられっ子になる状況であるにもかかわらず…………。 「なんでも金色に変えたら、お金持ちに見えるとしか思っていないエセお嬢様のくせに!金メッキで塗りたくられた電車何て、乗りづらくてしょうがないのよ!ねぇ、わんこ」  彼女が以前までは私たち同じ黒髪で、今のようにジャラジャラしたネックレス何て着けてないことを指摘する。これは彼女に対してクリティカルヒットしたようで、彼女の縦ロールがぴくぴくと震えている。すべての選択肢がわんこに託された今、勝利はご主人様の私に映ったも同然だ。そう少しばかり勝ち誇った顔をしていると、それを見たわんこが見下している相手に罵られたマリアの肩を持つかのように、彼女の白いハイソックスに体を擦りつける。 「金メッキの方がゴウジャスでいいだろ!」 「わんこ、あんた犬なんだから、色の識別する機能ないでしょ。あと、当電車は特急なので、途中下車は出来ません!」  わんこの擦りつける感じから煽られていることがわかる。しかし、この話題についてイケない者がいた。「よくやった」とわんこを撫でながら、何を言っているかさっぱりなんだけど、と首を傾げるマリア。わんこの声はマリアには届いていないようだった。  ということは、マリアが動画を撮って大爆笑していたのは、しゃべる犬が奇妙だからではない。犬に話しかけながら綱引きをする私がヤバい奴だったんだ…………。
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