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大学の講義が終わり、空は橙色に染まっていた。
付き合い初めて半年になる彼女の美由も講義の為に園内にいる。
迎えに行く前に親友の透に呼び止められた。
「祥吾、ちょっといいかな」
立ち止まり、透の前で変わらず、笑顔を浮かべる。
背丈は殆ど変わらない。175くらい。
「どうした?今から美由と飯でも行こうかと思ってんだけど、お前も行くか?」
いつも通りの会話、な筈だった。
透はバツが悪そうな顔で頭を掻く。
「あー...その事なんだけどさ」
「透くん!」
透の背後から明るい声がした。
聞き慣れたその声は...。
「しょ、祥吾。居たんだ」
...居たんだ?
居たら悪いのか?
そもそも、なんで俺ではなく、透を嬉しそうに呼ぶんだ、と俺は思考がパンクしそうだった。
二人に連れられ、人気のない一角で言われた言葉に愕然とした。
透と美由は浮気していた。
いや、浮気じゃないか。
二人は俺が知らない間に交際していた、と言う...。
「...いつからだよ」
「...祥吾、こないだ、暫く、実家に帰ってたでしょ?その時に...」
「美由。美由はいいから。俺から話す」
...美由?
こないだまでは美由ちゃん、て呼んでたじゃないか。
「実家に帰ったの、先月だけど?」
「うん...美由、寂しがっててさ、俺も退屈だったし、2人で飲みに行って、それで...」
「...ヤった、て訳」
「まあ、最初は...でも、次第にさ。お互いに好き、ていうか...恋愛感情が止められなくなって...本当にごめん、祥吾。祥吾を裏切るつもりは無かった」
わなわなと体が震えた。
ひと月も前から、俺は騙されてた、て事か。
三人で一緒に飯に行く事だってあった。
二人はてんでいつもと変わらないように見えて...影でコソコソと俺にバレないよう付き合ってた、て訳か。
美由にとっては二股だ...。
「...殴れよ、祥吾」
「ちょ、透くん!」
慌てて、美由は透を庇う。
彼氏の俺ではなく...いや、違うか。
今は美由の彼氏は透なんだよな。
自嘲気味な笑顔が浮かんだ。
「ふざけんな。殴って何になる?お前らが俺を裏切ったことに変わりはないだろ。殴るのが馬鹿らしい。顔も見たくねーよ、二度と」
...大好きだったのにな。
付き合い初めたきっかけは学園祭の準備だったっけ。
仲のいい友人から、互いに恋心を抱くようになり...。
全ての思い出を破り捨ててしまいたい。
俺は踵を返し、振り返ることなくその場を離れた。
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