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強烈な喉の乾きで目が覚めた。
次いで、起き上がると前かがみになり頭を抑える。
「いって...」
アレ?と遅ればせながら、異変に気づく。
俺の部屋のベッドとは違う、うちの安物なベッドや布団とはまるで違う。
広さもダブルより僅かに広いかもしれない。
が、体を起こして早々、目を見開いて固まった。
「...何処、ここ...」
随分、小綺麗な寝室。
と、その時だった。
「あ、起きた?」
寝室のドアが開き、俺はぎょっとした。
先程、居酒屋で隣り合わせた男性だった。
確か、二人であれこれ喋りながら飲み食いした。
...でも何を話したのか思い出せない。
「水、どうぞ。祥吾くん」
「ど、どうも...。て、俺の名前...」
ベッド際に立ち、水の入ったグラスを受け取り、見上げた。
スーツ姿ではなく、グレーのVネックの薄手のセーターに白いゆったりしたスラックス。
手足が長く、スタイルの良さが見て取れる。
「忘れちゃったか。随分、飲んでたもんね。君、酔っ払って、テーブルに突っ伏して寝ちゃったからさ、置いて帰る訳にもいかなくて。あ、一応、店で自己紹介は済んでるんだけど、俺、孝介。向井孝介」
...頭が上手く回らない。
記憶がだいぶぶっ飛んでいるようだ。
「え、て、孝介さんが介抱してくれたんですか」
「介抱、ていうか、まあ、俺も帰んなきゃだし。君は寝てて起きないしさ。タクシー乗せようかとも思ったけど、さすがに寝ちゃってるし、運転手さんも嫌だろうしね」
かあ、と羞恥で顔が熱くなる。
ついさっき知り合ったばかりの人に...てか、名前を聞いたらしいのに、忘れた上に、自宅にまで連れ帰って貰うとか...。
「す、すみません、迷惑かけて...」
「や、いーよ、別に。失恋したんでしょ?そんな日もあるよ、たまにはさ。失敗してなんぼ。次はいい恋愛したらいいよ。今回を教訓にしてさ」
「あ、俺...そんな話しもしたんですね」
縮こまる俺とは裏腹に一瞬、孝介さんは形のいい瞳を見開いた後、爆笑した。
「失恋話ししたのを忘れるくらいだしさ。その程度だったんじゃないの?祥吾も散々、元カノの悪口、言ってたし。いちいちカロリーを気にするだとか、いつもダイエットしなきゃ、てうるさいから食事が不味くなるとか、本当は巨乳が好きだけど、目をつぶってやったとか」
ケラケラ笑う孝介さんに俺は唖然とし、口まで開いた。
そして、俺も孝介さんに釣られ、吹き出した。
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