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出てくる言葉はそれ? じゃあ、片付けろよ! 作ってきてもらっておいて、片付けることも、洗うこともしないくせに?
「ごめんごめん」
おどけたように笑って言葉にする。
いつもそう。なんで、いいタイミングでぶっ込んでくるのかな。イライラピークに達する直前に、うまーく一番ムカつくことを投げてくるその姿勢に乾杯! いや、ほんとすごい。まじで。毎回毎回。ざっけんな。
ってか、犬がスマホをいじってるって、冷静に考えると可愛いな、面白いな。笑えないんだけど?
わざとらしく音を立てて、カツキが食べ終わったお弁当箱をしまい込む。こすれて鳴る音に耳を垂れ下げて、あ、もともとか。しゅんとしたフリをしている。
こちらをチラチラと伺うようにしているカツキに、声をかける。
「なに?」
「いや、なんでもない?」
「何その疑問系」
「なんでもない、ほんと。本当に」
尻尾までシュンとしてる。カツキが犬に見えるようになってから、カツキの感情が分かりやすくなった。それがいいことか、悪いことかで言えば、今のところ悪い比率の方が高い。
イライラが増す。イライラましましで、って感じ。
「思ってることあるなら、話し合おうって決めたじゃん?」
こてんと首を傾げる姿が可愛くて、頭やらを撫で回す。少しだけ雑のは、嫌がらせも兼ねてだ。
「痛いって」
「わざと」
「もー!」
イチャイチャで喧嘩はなし。はい。おしまい。私の作戦勝ちで終了。
こうやってなぁなぁにするから、私のイライラちくちくは蓄積していく一方なんだ。まったく解消されず溜まっていったちくちくのせいで、犬になんか見え始めたんだろう。
「はぁ」
「なんでため息つくんだよ」
「疲れたの」
「俺だって疲れた」
なぁなぁにわざと私がしたのに! わざわざムカつくボールをど真ん中に投げてくる、迷ピッチャーだわ。嫌いになりたくないからこんなに我慢してなぁなぁにしてんのに。
「そっか、おつかれ。教室戻る」
イライラを飲み込んだら、次は瞳から雫がぽたぽた。気づかれないように背中を向けて、息を押し殺す。
なんで、毎回喧嘩になるの。どストレートでムカつく言葉投げてくんの。気遣ってくれても良いじゃん。私は、カツキのために考えてお弁当作ってきたりもしてるのに。
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