私の彼氏は大型犬

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 笹田さんと別れて、カツキに電話を掛ける。カツキの後ろはガヤガヤとうるさい。友達とカラオケにでもいるのだろう。こんな事で棘を溜め込んでることがおかしくなってきた。   「あはははは」 「何? どうしたの? なに?」  戸惑った声すら面白くて、笑い声がまたこぼれてしまう。 「あははははは」 「え、本当何? どうしたの狂ったの?」 「あー面白い。ね、話したいことあるから、会おうよ」 「どうしたの?」 「この後話し合いです、駅前にいるから、会おう」  いつもと違う雰囲気にビビったのか。カツキはすぐに電話を切って、メッセージを送ってきた。「すぐいく!」という犬のスタンプは、どことなくカツキに似ている。  走ってきた、カツキは困惑した顔で私をジィッと見つめる。 「その顔、すごく傷つきます」 「急にどうしたの」 「明日休みだし、きちんと話し合おう。私ずっと思ってたこといっぱいある。喧嘩しよ」  私の言葉にハテナを頭の上に浮かべながらも、困惑しながらもきちんと聞いてくれる。あぁ そっか。私が諦めてただけで、聞く準備はしてくれてたのか。 「いつもいつも、1番言われたくないタイミングで変な説教されるのも傷つきます」 「そんなつもりはなかった」 「その言葉もすごく嫌いです」  カツキの表情が翳る。急な私の言葉に理解してない頭で色々考えているのだろう。 「ごめん」 「その、平坦なゴメンも嫌いです。でも、あなたの中では、きちんと謝ってるんですよね」 「うん、申し訳ないなと思ってる」 「気づきませんでした」 「ごめん」  ぎゅっと抱きついてみる。体温は暖かくて、柔らかくて、やっぱり大好きだ。 「あなたが好きです。別れることを考えると泣き出すくらい、あなたの言葉に傷ついて泣きながら寝るくらい」 「ふふ」  急な惚気の言葉に、嬉しそうに微笑んだ顔がイラつく。 「笑い事じゃないからちゃんと聞いて」 「はい」 「でも、嫌いなところ、イラつくところいっぱいあります。だから」 「もうやめたいってこと?」  不安そうに眉毛を下げてから、私の顔色を伺っている。
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