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プロローグ
白海の国に伝わるおとぎ話をお話ししよう。
この国の子どもなら一度は読んだことがあるという、有名な話である。
それはよくあるおとぎ話だ。
華やかな城に暮らす王女の物語。
美しい王女は多くの人に愛され、数々の出来事を経験し成長していく。そして素敵な男性と恋に落ち、愛し愛されることを学び、幸せになるのだ。
そんな王女の相手。よくある物語と違い、相手の男は王子ではなかった。
男は王女に忠実な騎士だったのだ。
しかし、これはこれでよくある物語なのだろう。
王女と騎士は身分の違いを超え、お互いの愛を確かめていった。
人々は二人の純愛にため息を漏らし、恋愛好きな少女たちは二人の仲睦まじい様子に頬を染める。
――……数々の逆境を乗り越え結婚した二人は、それからいつまでも幸せにくらしました。と、さ。
……というのは子ども向けの絵本の中身であって、実際はそうではない。
男の愛の重たさに、ため息を漏らしたのは王女本人だったのである。
そんな王女の名前はトア。この国白海の王の一人娘である。
そして絵本の中で騎士として描かれるのはトアの側近、名前はリアンと言う。
――ちなみに私はこの物語の担い手、システムと申します。初めましての方もそうでない方も、どうぞよろしくお願いいたします。
何分おしゃべりな性分でして、時折こうしてお話しさせてくださいね。ははは。
さて、トアとリアン、二人の出会いから始まる彼ら物語を見てみよう。
日々の何気ない暮らしの中で時に悩み、苦しみ、そして悲しむこともあるだろう。しかし同時に楽しみや喜び、幸せを見つけ、彼らは少しずつ成長していくのである。
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