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下を向いて黙ってしまったトアを解放したリアンだったが、その時のトアの表情が残念そうに見えてまた彼女を抱きしめる。今度は軽くハグする程度だ。
「……無理強いするつもりはないんだ。俺が完全復帰するまでは待ってる」
優しいことを言われているような気がするが、トアは少し考えて眉間に皺を寄せた。
「……ん? 私の心の準備ができるまで、とかじゃなくて? リアン基準なの?」
リアンははははと笑っている。
「それだといつになるか分からないからな。でもその言葉が聞けて良かった。心の準備、してくれるんだ?」
「っ……」
なんだかまた嵌められたような気がした。
トアは顔を真っ赤にして首を振った。
「……それだけ冗談を言う元気があればもう心配いらないわね。……おなか空いてない? 何か軽食でももらえないか聞いてくるわ」
「俺が行こうか?」
ベッドから出ようとするリアンを押さえつける。
「あのね、今週いっぱいは安静にしてろって言われたでしょう? リアンの力以上のペースで回復させちゃったんだから。私のせいだけど」
「ああ、君の力だ」
リアンはトアの手を取り、甲に口づけた。
「本当に感謝してる。君の力があったから、俺は君を感じることが出来たし、絶対に帰ってくるって思った。俺が今生かされているのはトーランスのおかげだよ。だからこそこの命を君のために捧げるって誓う」
もうすっかりいつものリアンである。トアは呆れて笑った。
「全くもう。私に捧げてくれる命ならこれからも大切にして。ほら、とにかく今は横になる!」
「分かったよ」
***
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