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そんなリアンの境遇を可哀想だと言う者もいた。
彼はまだ子どもだ。普通の少年なら、学校に通い、友だちと遊ぶことが楽しい時期だろう。任務や訓練に明け暮れる必要はない。
この頃世界はおおむね平和だった。
リアンの暮らす白海は四大王国の一つであり、国王はこの世界の四天王の一人でもある。
当時はそこまで裕福な国ではなかったが、経済も安定しており、彼の暮らす首都サンフィリスは治安も良い。
国には高度な軍事部隊はなく、古くから組織されていた自衛隊が武力を行使できる唯一の組織である。力の強い者の多くは自衛隊に所属してはいたが、慣習的に白海に任される任務は他の国と比べると力よりも技術的要素が求められてきた。そのため本当に力の強い者にとっては若干生ぬるい組織でもあった。
入隊に年齢制限はなく、年齢に見合った任務が宛がわれるため、所属する年齢層は幅広い。しかしリアンのように学校にも通わずに自衛隊に所属する子どもは珍しかった。
当時の世界の情勢や任務の内容を考えても、リアンには自衛隊ではない別の道がいいのではないかと度々言われたが、周囲の者は最終的に父親の教育方針を変えることができなかった。
リアン本人が進んで自衛隊という道を選ぶのならまだいいのだろうが、中には『親の言うことに逆らえないのでは』という見方があったことも確かだ。それはエンゾの強引な性格も関係しているだろう。
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