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美人警部補、織田マリア
うららかな小春日和。柔らかな日差しが心地よい。
ボクとショパンは学校からの帰り道を歩いていると真っ赤なコンバーチブルが一台、ボクたちを抜き去っていった。
「おおォ……」ボクは驚いて声を上げた。
目にも鮮やかな真っ赤なロードスターだ。オープンカーなので運転している美女が覗いて見えた。
すぐにブレーキ音を響かせボクたちの前に急停車した。
「うッううゥ……」ボクたちは唖然としてコンバーチブルを見つめた。
やがて真っ赤なオープンカーから美女が颯爽と降りてきて美少年のショパンに微笑んだ。
「フフゥン、ショパン。久しぶりィ!」
スーパーモデルみたいな美女は黒髪を揺らしてショパンに駆け寄り抱きついてきた。
小学生への挨拶にしてはかなり過激だ。
彼女は警視庁きっての美人警部補、織田マリアだ。かつてベテラン刑事が『女性刑事に美人はいない』とテレビ番組(ジョ○チューン)で言っていたが、織田マリアは別格だろう。
圧倒的に美しく艶やかだ。
柔らかな胸の膨らみがショパンの顔に押しつけられた。
「うッうゥ……」
強引にハグされたショパンは、小さくうめき声を上げて目を白黒させていた。
香水だろうか、彼女が近くに来ると甘美で蠱惑的な匂いがボクたちの鼻孔をくすぐっていった。
「フフッ、元気だった。ショパン。相変わらず可愛らしいわね。もう食べちゃいたいくらいよ。チュッチュッチュッ」
まるでペットのチワワのようにショパンの頬へキスの嵐だ。まさにネコ可愛がりといったトコロだろう。まったく羨ましいヤツだ。
ボクにも代わってほしいくらいだ。
「ううゥ……」
ショパンもかすかにうめくだけで固まって微動だにしない。顔を真っ赤にしているものの嫌がってはいないようだ。当然だろう。こんな美女からキスを受けているんだ。思春期の男の子なら誰だって嬉しいはずだ。
けれども周辺の通行人らは唖然として見ていた。相変わらずショパンは黙ったままだ。
「あ、あのマリアさん。またなにか事件ですか?」
代わりにボクが警部補の織田マリアに訊ねた。
さすがにこれ以上、ショパンを放っておくことは出来ない。今すぐ助けないと本当にショパンが頭からガリガリと食べられてしまいそうだ。
「フフゥン、そうなのよ。さァショパン。ロードスターに乗ってェ」
彼女はショパンを助手席に招き入れ、ボクの首根っこを掴んで後部座席へ放り投げた。
「い、痛いですよ」思わずボクは嘆いた。
まるで拾ってきた野良猫みたいに雑な扱いだ。
「さァシートベルトをつけたかしら。じゃァ行くわ。ときめくようなミステリーツアーにレッツゴー!」
織田マリアは掛け声とともにロードスターを発進させた。
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