変化がもたらす現実

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 そうして、一年ほどかけて私は結婚前の体重に戻すことに成功した。驚いたのは周りからの反応で、夫にも義母たちにも明るくなったと言われたのだった。たしかに一年前までは、私がお洒落したところで、とどこか卑屈になっていたかもしれない。気付けば自信というものが付いたようにも思う。  しかしその反面もっと驚いたのはママ友たちの反応だった。私の入っていないLINEグループで私が病気なんじゃないかと噂が流れているらしかった。ある時は夫に直接、 「あなたの奥さん大丈夫?浮気とかされてたりしない」  などと言ってきた人がいたという。夫は、 「大丈夫、てきとうに受け流しといたから」  と言ってくれたが、それは衝撃だった。女の僻みとは怖い、と私は思い知ったのだった。後に知った更に怖い話は、病気の噂を流したのは私の入っているLINEグループのママ友だったということだ。私がダイエットを始めたことは知っているはずなのに、本当に妬みや僻みというのは恐ろしい。  とはいえ、娘のこともあるのでグループから抜けることはできずに、つかず離れずくらいの立ち位置を保つことにしたが、正直、面倒でしかなかった。 「女ってのは怖いもんだな」  私の話を聞いた夫は眉を上げてそう言った。 「私も驚いちゃった」 「悪いな、お前にばかりそんな思いをさせて。俺がもっと保護者との関わりのある所に顔を出せてればそんな柵も少しはましになったかもしれないのに」  夫は本当に申し訳なさそうにそう言った。 「いいのよ。そうしたら今度は、あんな風に旦那さんに任せるなんて奥さんはどこで何をしてるのかしらって始まるんだから」  そう。何をしたところで、一度そうなってしまうとなかなか修復は難しく、私にしてみればくだらないことだった。人は誰か共通の敵を作ることで結束を深める。とくに直接的な被害はほかにはないし、除け者にされているわけでもない。だから私は、気にしていない体を通すことにした。これが一先ず娘が小学校か中学校を卒業するまで続くのかと思うとうんざりしたが、元々食事会に参加するといったことは苦手なタイプだったのであまりしていなかったのが救いだった。最初はしていたのに付き合いが悪くなったなんてことになったらその後の悲劇は火を見るよりも明らかだ。夫が私の味方でいてくれるだけで心強かった。
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