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第七章
たくとさんがリーダーを事態した事と、これまで村の中でやって来た事を、村人たちに公開すると「やはりあずまさんが正しかった事が証明されたっ!」「我々は本当にずっと騙されていたんだっ!」「でもリーダーは誰がたくとさんの代わりをするの?」と騒ぎ立てる。
「村のリーダーは、暫定で、次の者が決まるまで、あずまさんにして貰う。村の為に尽力してくださった方でもあるから、務まると思う」
「残虐は行いをしたたくとはどこにいるんですか? みんなでそいつを叩きましょう」
「犬鳴たくとはもういません。彼も皆さまに騒がれるのは好きではないでしょうから、彼の話しはこれまでとします。さて村の戒律も改めるので少し村の中を掃除しましょう」
あずまさんの指示で、村人たちと村の掃除をする事になった。
「まずは、池の中の藻やヘドロを除去しましょう。これだけ濁っていたら鯉も窒息してしまいますし、雑菌も繁殖しやすい『破傷風』はこうした所から傷口に入っていくんです。それから鯉を傷付けないように、皆さまも怪我しないように気をつけて下さいね」
池の中には、よく肥えた鯉ならたくさんいるが他の魚がいない。網で捕まえるのにも一苦労だが傷付けないように一匹ずつ捕獲しながら汚れた池の中を綺麗にしていく。
「流石は外来種の魚ですね。この中にいた在来種の魚を食いつぶしたのかもしれません。これだけ大きな池なら、アメリカザリガニやアカミミガメなどがいてもおかしくないんですが」
どちらとも、元の飼い主が放流する生き物で多い種類だ。こうした外来種の生物は在来種の生物を食いつぶして生態系を狂わせるとテレビできいた事がある。
「池の中には鯉が食べ残した遺体や人骨が残っていると思いますが、皆さまは怖くて触れないでしょう。俺が責任を以て回収するので安心して下さい」
「い、遺体や人骨が?」
「皮膚や皮下組織は池の水でふやけてしまいますが、骨はカルシウムなのでずっと残っている事が多いんですよ。それにしても都会の人は、こうした池の中に色んな物を捨てていきますが、プライドだけは捨てられないんですよね。ペットと共に過ごした思い出も捨てる事になるし、捨てた物は二度と戻ってはこないのに。何を捨てるにしても、希望だけは捨てないでいきましょう」
あずまさんは、そう言うと池の底に転がってそうな遺体や人骨の回収に向かう。
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