狂った祝祭

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 「それなら、あなたが言わなくても良かったのではないですか?」  「仮に、俺がたくとさんを殺害したとしてメリットはなんですか? まといさんを自分の物にする事でしょうか?」  「それは手段に過ぎません。あなたは、この村を自分の思い通りにコントロールする為に、邪魔だったたくとさんを自殺に追い込んだ。その為には、村人を自分の味方につける必要があった。違いますか?」  私を含め、村人たちは全員、あずまさんに欺かれていたという事? しかし、あずまさんは、其れらしい事をここではしていないと思うけど、まといさんは、自殺したたくとさんの復讐をあずまさんにしたいだけのように思うけど。あずまさん本人が認めない以上はなんともいえない。  「まといさんが、そう推測する根拠はなんですか?」  「あなたが、この村のリーダーになる事を村のみんなが認めれば、村人を思い通りにする権利を獲得出来る。さっきだって、わざわざみんなを集めて名探偵のように、たくとさんを犯人呼ばわりしたのも、たくとさんの自殺や遺書の事をわざわざ報告させたのも、たくとさんを完全に悪役にする為の手段だったのよ」  「そう思いますか、村のみんなはどう思いますか?」 「おいおい酒の席であずまさんに八つ当たりは良くないぞ」「もしも仮にそうだとしたら、あそこまで村の掃除をしてくれる筈がないだろう」「それに村のリーダーなんだから、村人に指示を出して動かすのは当たり前の事だし、自ら遺体や遺骨の回収もやってくれたんだ」村人たちは口々にそう言っている。  「だそうですが、どうですか。まといさん」  「さっき自ら遺体や遺骨を回収したと言ったけど、普通の人なら、人の死体を自分から触ろうとしないし、出来ないものです。それをそういう事に慣れているかのように躊躇なく回収出来るのは実際に人を殺した事のある殺人鬼くらいですよ」  確かに、池や畑の遺体や遺骨を、あずまさんは平然と回収していた。  「更にいえばスズメバチの巣の除去だって、一般人には怖くて近付く事も出来ないものですが、あなたには、まるで恐怖感がないように見えた。そう、まるで心がないような」
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