狂った祝祭

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 突如、ドサッと人が倒れる音がした。  「むらせさんはもういいんですよ。たくとさんの跡はやはり私が継ぎます。だからそれに反対する者は私が始末します」  まといさんが静かにそう言うと、扉がスゥっと開き、おどろおどろしい鬼の面を被った彼女が姿を現した。むらせさんは、床に横たわり、顔を青ざめている。まさか、むらせさんを殺害する実力行使に出たのか。でもどうして。  「杉沢あずま、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやるっっ!」  「お餅を食べさせたんですね。それも、誤飲して窒息しないように、切りもせず、砕きもせずにそのまま。それも親に向かって」  まといさんがキリキリと歯軋りを立てながら怒りをあらわにするが、杉沢あずまは至って冷静に答える。  「親? たくとが自殺して婚姻関係は有り得なくなった、だから親ではない」  「随分はっきりおっしゃいますね。しかし、高齢者にそのやり方は、好ましくないと、思いますが」  「むらせは、たくとを殺人鬼にした男。この村を変えた元凶だと遺書を読んではっきりとわかった。だから殺人鬼一家を私が終わらせただけだ」 「それなら既に目的は果たしたんじゃないですか?」 「まだだっ! 杉沢あずまときょう、お前たち二人を始末しないと、私は村のリーダーにはなれないんだ!」 まといさんは火箸を構えたまま、私と杉沢あずまににじり寄って来る。殺害対象に私も含まれているの!?  「きょうさん、まといさんいや、やぶきりおには俺が相手をしますから、下がってろ」  杉沢あずまが私の前に出た。
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