狂った祝祭

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 「ここにいてはあんたも、ただじゃ済まなくなる。対処してる間に逃げろ」  「そ、そうします。けど、どうして私を活かそうとするんです?」  「今は答えられない、話してる時間はないんでね」 私は杉沢あずまとやぶきりおにから、急いで遠くの民家の影に逃げ込んだ。もう一度、杉沢あずまの情報を調べてみると、見落としがある事に気付いた。 『杉沢あずま(1979年10月3日〜2021年)』 つまり杉沢あずまという人物は、二千二十一年に既に他界している事になる。という事は、今ここにいるあの男は、杉沢あずまに成り済ました別人に違いない。出逢った時から私は杉沢あずまに成り済ました男に欺かれていたのか。本物が訪れた村が火災にあったりしたのも、ひょっとしてあの男が起こした者なのだろうか。 『○○県にある△△村の火災は、浅間義行という人物が起こしたもの。宴会場で起こした火が一酸化炭素中毒を引き起こし村民を窒息死させた。なお遺体は黒焦げの状態で発見された』 『○○県の△△山地のある村では、野外で食事した村民が夾竹桃の煙によって毒殺されたが、遺体は焚き木の燃料として使われたので、炭のように黒かった』 『これら二件の殺人に対して杉沢あずまは浅間にネット上で講義したが、その後日に殺害されている』 あの男の正体は、どうやらサイコパス殺人鬼『浅間義行』で間違いないようだ。気付かなかった。殺人鬼と一緒に食事をしたり、お酒を飲んだり、一緒に寝たり。たくとさんがやぶきりおにだった時も、殺人鬼と食事や酒を共にしたようなものだけど、それは私に向けられた警告メッセージだったのかも知れない。そういえば、浅間とまといさんの声が聞こえない。やけに静かだが、二人はどうしたんだろうか。恐る恐る、建物の影から様子を覗いてみる。
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