狂った祝祭

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 「!!」  殺人鬼二名が村の真ん中で接吻をしているではないか。 いや、厳密には、接吻で口を塞いで窒息させている。殺人鬼が相手とあっても女性である事に配慮して、傷付けずに殺害したのか。単純に凶器がなかっただけなのかも知れないし。血も涙も悲鳴も出ない殺しかたを、仮面の殺人鬼に正面からやってのたのかも。だとしたらたくとさんに自殺教唆したというまといさんのあの時の主張は間違いではなかったと言える。  「見たな?」  「いや、私は信じがたい光景を見せられただけど、私を殺さないのは何故です」未だに何を見せられたのか頭の中を整理しけれないけど、出逢って初めて感じた、他のユーチューバーとは何か違う物は、この事だったんだ。それからずっと胸の奥に蠢いていた違和感も。  「私もキスで殺すんですか? 人の命も唇も奪っておいて」  「きょうさん、あんたにはして貰う事がある。まあまずは、遺体の処理だ」  浅間はまといさんの遺体をずるずると引き摺りながら、こちらに向かって来る。ここで殺した人の遺体を処理させる為に、私を生かしたというのか。ここで逆らえばいつか私も殺される。遺体損壊や遺棄の作業を手伝えば、私の犯罪者も仲間入りになってしまうが、ここは、浅間に従うしかない。万が一組み合いになって浅間を殺害しても正当防衛で許される可能性はあるが、相手は何人の人の命を殺めて来た殺人鬼だ。到底勝てる気がしない……  「私、した事がありませんけど、それでもするんですか?」  「俺一人では無理だ」  「でも、どうやればいいんですか? 魚を三枚に卸すのと違うんですよ」  「俺が教える。あと、声が大きい。もう少し静かにしてくれ」  「すみません」  「まずは、頭と両の手足を関節に分けて切断するんだ」  「簡単にいうけど、私にとっては簡単じゃないんですよ」
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