狂った祝祭

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 浅間は遺体の損壊作業を私にレクチャーした。  殺人鬼から物を教わるのはなんだか屈辱的な気分だが、口達者な特徴もあり、人に物を教えるのが上手だ。  「死亡しているから血液流れない、ただ、関節を切断した時に中の血が飛び散るから気をつけるんだ」  「わ、わかりました」  本来なら血痕を残さないようにお風呂にブルーシートと新聞紙を敷いて、解体するそうだが、村の中に拝借出来る場所も道具もないので、近くに転がっていた手頃な石で解体に取り掛かる。人骨は思った以上に硬く、叩いても叩いても、切断出来ないどころか、返り血が服や顔に飛び散って来る。遺体から強力な腐敗臭が早くも鼻を刺激してきた。  「どうした。俺が変わろうか」  「すみません、よくもまあこんな気分が悪くなる事が出来ますね」  「慣れてるから」  「やっぱりそうなんですね。それと私の事も騙してたんですね。浅間義行さん」  「検索したのか。そうだ。許せないか?」  「当たり前ですよ」  「パーツはあらかた解体出来た。本来は燃やして灰にしたほうがベストだが、今、火を点けるのは危険だ。池や畑から拾った遺体の中に隠しておくか。運ぶのも手伝ってくれるか?」  「こうなったら仕方ないですよ!」  「こいつは戦利品として頂くとする。見つからないように動いてくれよ」  そんなもの、よく身につけられるなと呆れるけど。それより洋服についた遺体の生臭い臭いがとれないが、我慢しながら解体した遺体のパーツを遺体置き場まで運ぶが、そこで村の人とばったりあってしまう。  「あんた、ここで何やってるんだって、杉沢さん? その格好は? 持っているのは」  「まといさんの頭ですが」  「人殺し! 人殺しだあっ! 誰かこいつを捕まえろおっ!」
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