狂った祝祭

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 大きな広い池では、よく肥えた鯉が数匹泳いでいる。ぷかぷかと浮かぶ藻やヘドロで水は濁っているが、どの鯉も元気そうだ。団子状の餌をあげてみると我よ我よと集まって餌の奪い合いを始め出したではないか。畑に佇む案山子もよくリアルに作り込まれている。恐らくカラスなどが啄んだりしたのだろう、ズタズタにされ顔などが原型を留めておらず、どこか異様な臭いもする。畑では育ちが違えど様々な作物がたわわと実っていて、それを狩りとる手伝いをさせて貰った。 「そういえば、村の村長さんに挨拶がまだでしたね。村長さんはどちらに?」 「私が村の長ですが」 あずまさんの質問に、むらせさんはそう答えた。 「あなたが」 「ええ、ですが村の集団を引率するのはたくとに一任しております。犬鳴にはその補佐を」 「そうなんですね。ところで、この村には、やぶきりおにという、民間信仰があると耳にしたのですが、ご存知ないですか?」 あずまさんは取材の本題を切り出した。 「むかしから、余所からやって来たどろぼうなどを退治する鬼だと信じられています。今では村の戒律を破った者を、罰しています」 「戒律とは」 「一つ。得た物は村人どうしで分かち合うこと。二つ。得た物は村の外に持ち出してはならない。三つ。得た物はやぶきりおににお供えする事。四つ。戒律三つを破った者はやぶきりにされる」 「村人たちでシェアするんですね。素晴らしい戒律です」 「シェアですか、そうですね。得た物は村人たちでなんでも分かち合っています」 利益の独占や奪い合いはこの村で禁じられているいっぽうで、やぶきりおにに対する信仰も忘れない。噂で聞いた話しとは随分と違う。私はそう感じた。この時は。 「一仕事済んだ事ですし、お二方を、村人たちに紹介するとしましょう」
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