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第四章
「この村はそういう村だったのか」
むらせさんに用意して貰った寝室で、あずまさんは独り言を言っている。
「村のリーダーはたくとで、まといと婚約中。むらせはたくとの父親だ」
確かに、お酒の席で「将来の夫」と言っていたから婚約者なんだと思う。むらせさんを父親だと断定した根拠はなんだろう。
「どうしてそう思うんです?」
「俺たちに紹介した時、たくとだけ呼び捨てにしてました。それは父親が家族を紹介する時の言い回しですよ」
「でも名字が違いますよ」
「母方についたんですよ」
「この村に来て、一度も見てないですけど」
「既に、他界している可能性が高いですね」
「それならお墓に埋葬していると思いますが、とはいえ、この村では墓らしい物を見ていませんね」
「ないんでしょうね。だとしたら土葬です。戒律によれば、村人は村から出れないようになっています。出たらやぶきりおにに神隠しにされるから。そんな神隠しに遭うのは決まって村人のみ。つまり村の中でだけ神隠しは起きているんです」
「神隠しって、実際どういう事になるんでしょうか」
「この村に来てから、俺たちは既に見て来ました」
「何時からですか?」
「鯉の餌やりをした時からずっとです。そうなると、おとぎ話しの謎も、やぶきりおにの正体もわかって来ました。頭がスッキリ晴れました。これで仕事に集中出来そうです」
なんだか探偵小説の探偵みたいな事を話した後で「明日、村のみんなを集めましょう」そう言ってあずまさんは眠りに就きました。
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