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第五章
「皆さま、おはようございます。今日は、皆さまに、大切な知らせがあります」
村の広場に村人たちを集めたあずまさんは、昨晩推理した事を報告した。
「朝早くから大切な話しってなんですか?」
「皆さまは土にPET。つまりタンパク質分解酵素がある事をご存知でしょうか。これは土に埋もれた動物の死骸にあるタンパク質を分解し、植物の栄養に変える酵素です。どんなひとの死骸でも」
「あずまさんは物知りですね。それが大切な知らせですか?」
「まぁ続きを聞いて下さい。この池にいる鯉ですが、鯉は外来種の魚で、口に入るものであればなんでも飲み込む習慣があります。餌になるものならひとの遺体だろうが」
「鯉ってそうなんですか? それは初めて聞いた」
「そして案山子。もともとは『かがし』といって、強烈な臭いで、からすから畑を守る役目をしていました。それはひとの遺体とすり替えても気付かれないほどです」
「ちょっと待って下さいあずまさん、まるでひとの遺体を畑に埋めたような言い回しですが、何を根拠にそんなことを?」
むらせさんが口を割って入った。正直。あずまさんが何を言おうとしてるのか、私にはわからなかった。この時は。
「昨晩の鍋料理の名前は、山田さん、田中さん、村岡さんでしたね。時間をかけて彼らが育てたと。これはご本人を畑の肥料や魚の餌に使った
ものだと推測します」
「一体誰がそんな事をしたと言うんですか」
「残念ながら村の皆さまです。いえ、させられたと言ったほうが適切ですね」
「誰にさせられたというんだ。村人をそんな風に扱うなど、言語道断です」
「仰る通り、ですが俺たちがこの村でずっと見せられたのは、ひとの遺体を食べて肥えた鯉。ひとの遺体が埋まった畑。案山子に見えたひとの遺体。そしてそれを肥やしに育った野菜や魚だったのです」
「まさか」あずまさんの推理を聞いた村人たちは吐き気を催したようだ。顔を青ざめさせた。間接的とはいえ村人の遺体を口にしていたと思うと私も急に気分が悪くなった。
「いかい村の戒律その一は、得た物は、村人でシェアしろとのことですが、この戒律によって皆さまは村人や来訪者の遺体をシェアさせられていたんです。では、この戒律を作ったのは誰か。この村のリーダー、たくとさん。そう、やぶきりおにの正体はたくとさんだったんです」
まるで犯人はお前だと言わんばかりに、あずまさんはたくとさんを指さした。
「待って下さい、あずまさん。やぶきりおには昭和の頃から受け継がれて来た信仰です。まだたくとは産まれていません」
「そうですね。厳密にはやぶきりおにに成り済ましたのです。それで村に不都合な存在を消していった」
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