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「優二は、さ……入学式の後のこと、覚えてる?」
「あー、うん。覚えてるよ」
忘れたくても忘れられないよなぁ、あれは。
「あの時、ボク緊張しちゃって……言うだけ言って、自分の名前すら名乗らなくて、きっと失礼な奴だと思われちゃったなーって、あれからずっと考えててさ」
「あー……」
そうだな。あの時は正直、失礼な奴だと思っていた。
「その次の登校日……放課後ボクが呼んだ時、優二はちゃんと来てくれたよね」
「お、おう……」
「それもあるのかな……優二が男に興味ないのは勿論わかってるし、ボクだってそのはずなのに……でも、男だけど、君を……優二を、好きになっちゃったんだ!」
「……はあ」
「だから、改めて言わせて?……ボクは、優二が好きです。君だから、好きなんだ!だから、ボクと付き合ってほしい!!」
「無理!!」
「え、即答!?」
「そりゃそうだろ!」
男に興味はないと、俺は始めからそう言っている。
その時点で普通、返事なんてわかるだろうが!
「ううっ……でもボク、それでも絶対に諦めないからね!」
「あっ、ちょっ──!」
絶対に諦めない。そう言ってまた、いつものように走り去って行ってしまった。
「また言い逃げかよ、あいつ……」
想いを言うだけ言って、逃げやがって……やっぱり、失礼な奴だ。
「別のクラスだし、そんなに接点も無いだろうと思ってたのになぁ……」
最初は、そう呑気に考えていた……が、最初の告白の日から秋人の猛アタックが始まり、日々あいつから逃げ回る学校生活を、俺は送っていたりする。
……まあ、逃げ切れた回数なんて、ほとんどないわけだが。
「なんでこんなことになってんだろうなぁ、ほんと……」
男に興味はないと、ちゃんと何度も伝えてるはずなのになぁ。
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