届かぬ想いが声になって

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初恋終了のホイッスルが鳴ったと思われたが、なんと高校も同じであり、同じクラスだった。 彼女の行く高校なんて全く知らなかったけどもこれは、運命だと直感的に思った。 だからこの恋を成就するためにも少しずつでいいから仲を深めようと努力した。 毎日の挨拶。 忘れたフリして彼女のものを借りる。 買いすぎちゃったからこれあげるなんて言って、飲み物や食べ物を毎日のように彼女だけに配る。 わざと彼女の付近で物を落とす。 彼女が「これいいかも」と言ったものをさりげなく持ってくる。 これらが正解なのかはさておき、自分なりに日々頑張っていた。 けどもちっとも仲は深まらず、これまた時間は残酷で気付いたら高校の卒業式になってしまった。 もう、これ以上のチャンスはない。 告白するなら今しかない。 そう思った僕は、式が終わって帰ろうとする彼女を校舎裏に呼び出した。 「あの、さ…」 「…うん」 言うんだ。好きですって。脈がないことは分かってる。 でもそれでも言うんだ。これが最後かもしれないんだから。 「…?」 不思議そうに僕を見つめる彼女。 あぁ、いとおしいなぁ。 「あの、僕、カンナさんのことがす……」 「す…?」 言え!言うんだ、僕! 「す…す………いや、あの、えっと、そ、卒業、おめでと……」 いやいや何言ってんの!?僕!?意味分からないよね!? 彼女の顔、見て!? 返答に困ったような顔をしてるじゃん! 「あ、うん。ありがとう…でも高橋くんもだよね。卒業おめでとう」 「あ…あざっす」 「あ、えと、それだけ?」 「え?あ、いや、うーん、そう、かな…」 「そっかじゃあ、またどこかで」 「あ、うん、また」 僕は手を振りながら彼女の背中を見送る。 人生で初めての告白。 告白せずに玉砕。青春が終わりを告げたのだった。
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