0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
僕はいつの間にか寝てしまっていたようだ。
時刻は20時30分。
布団からのそのそと起き上がり、現実を受け入れたくないが、スマホを見ることにした。
中学のグループトークの通知と不在着信が数件。
不在着信を見ると同じ人から十件ほどあった。
少し眠たい目をこすりながら、不在着信の相手を見ると僕は目を疑った。
それが僕の好きな人であり、今日亡くなった彼女からだったのだ。
まだ夢を見ているのかと思い、またしても頬をつねった。
やっぱり痛い。これは夢じゃない。
でも何で彼女から…?
もしかして。
もしかして、彼女は生きてるんじゃ──。
あのグループトークで言っていたことは、巷で言ういわゆるフェイクニュースというやつでは……?
僕が告白できないヘタレ野郎だからって、同級生たちが仕組んだものかもしれない。
そんな僕の背中を押してくれた。
いつかはこういうことが起きるかもしれない。そうなる前に気持ちを伝えろって。
少し心が躍り、彼女に折り返しの電話をかける。
プルルルル プルルルル プルルルル
ガチャ
「もしもし……?」
通じた嬉しさに少し声が裏返った気がしたが、今はそんなことを気にする余裕なんてなかった。
「やっと出てくれた」
「ごめんね、電話出れなくて。ちょっと色々あって寝てた」
彼女の声が聞けて僕は嬉しかった。
「そっか…」
心なしか彼女は少し元気がなさそうだった。
「……元気、ないけど大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫。……あのね、私。高橋くんに伝えたいことあって電話したの」
「うん、なに?」
「あの私、もう死んでるんだけどね」
彼女の発言に僕は耳を疑った。
え?やっぱり彼女は死んでしまったの?でもこの電話は一体なに?
そんな僕の疑いを気にすることなく、彼女は話を続ける。
「高橋くんに好きだってどうしても伝えたくて……あの世から電話してるんだ」
「え?」
また彼女の発言に耳を疑った。
彼女が僕を好き?
そんなことあるわけ──あ、頬をつねると痛いや。
「中学の頃からずっと。それが心残りでどうしてもって神様にお願いしたら、電話することできたの」
なんと、僕たちは中学の頃から既に両思いだったのだ。
「……そう、だったんだね、僕もね。中学の頃から好きだったんだ」
「え!嬉しいな……好きになってくれてありがとう。……もう私、未練ないや。高橋くん、私がいなくなってもどうか幸せになって…………ね」
電話越しにジジジと音が鳴り、彼女との通話は終了した。
もう一度電話をかけなおしても留守電になってしまう。
こじれにこじれて十年経った今、僕たちはもう叶わぬ恋が成就した。
生前の彼女に届かなかった想いが、死後の彼女に伝わった。
それだけでも僕は幸せだった。
でも僕も彼女と同じように神様にお願いするのであれば、たった一度だけで良い。
僕は電話ではなく、面と向かって。
彼女に会って、彼女の顔を見てしっかり告白をしたかった。
神様。
僕にも願いを叶えてくれませんか?
彼女が死ぬ運命だったとしても。彼女に会いたい。ただそれだけ。
そう願っても何も起きない。
こういう時こそ、奇跡って起こるものだって信じていたのに。
最初のコメントを投稿しよう!