プロローグ

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プロローグ

 真冬の白い空の下、寒々とした空気に包まれた空の下に放り出されたあの日、そして今日だっておんなじ。やつれた顔を隠すように厚化粧を施した顔がカフェの窓に異様な姿で映る。 町の片隅にあるシャッター街の商店街にある   築50年は経っていそうな   古びた喫茶店の明るい窓際の席に一人、 椅子の上に背中を曲げ体育座りして大嫌いだったレモンを(かじ)ってる。初めて見かけた竜司と同じように。あいつの影を探すように。あいつの匂いを嗅ぐように。 わたしはレモンを齧る。 3年前、竜司もわたしもーーーーーーーー。 「絢香、また思い出してんだ」 軽口を叩いてわたしの目の前の席に腰を下ろしたのは友達と呼べるのか、それさえ不確かな新木梗子(あらききょうこ)23歳。町の小さな信用金庫に勤める女。その癖、夜はたまにキャバ嬢になる女。 「いいじゃん別に」 軽く無視してさっき買ってきたレモンをまた齧る。 コーヒーとタバコを前に置き    酒焼けした声でそう言うと    またいつもみたいに赤い色の箱から    タバコを1本取り出すと        平然と火を()ける。 夢だったらどれだけ良かったかーーーーー。 土砂降りの夜、わたしも竜司も逃げ回っていた。人生から、苦しみから、借金から、そして世の中の全てのものから。 沢田絢香、24歳。
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