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遥視点
「おかえり」
夢の中にいた男にそう言われた。
なんだ、どういうことだ。
状況が分からない。
「た、だいま」
反射的にそう返す。
そうすると男は嬉しそうに微笑んだ。
それを見てなんだか泣きそうになる。
その涙をぐっ、と堪え、ベッドの横に棒立ちになっていた妹に声をかけた。
「なぁ、これ…どういうこと、?」
「お兄ちゃん、コールドスリープして、今、目が覚めたとこ、」
妹も混乱しているのだろうか、上手く話せない様子だった。
だがコールドスリープのことを伝えられなんとなく記憶を取り戻してきた。
治療法が無い難病だったこと、コールドスリープで治療薬ができるまで眠ること。
あれ、じゃあ俺、
「病気治った?!」
「うん、今は経過観察中だけど完治はしているらしいよ」
混乱している妹に代わり、男が答える。
「え、俺どんぐらい寝てたの?」
「でもそんなに。5年ぐらいじゃなかったっけ。ねえ?」
「うん、確か」
5年って…結構じゃないのか?そうは思ったが、後から聞くと俺は早い方だったらしい。
「あともう一個、いい…?」
「ん、なに?」
ずっと気になっていたことを尋ねる。
「あんた、誰……?」
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