休憩

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休憩

「暑い……」  と、呟きながら家事手伝い(家事代行ともいう)の十月宰は、今の声が雇用主に聞かれていなかっただろうかと焦る。だが、彼女から声がかからないということは、聞こえなかったのだろう。彼は少し安心して中断していた家事を続行する。  まだ残暑ある九月だ。タートルネックは少々暑すぎる。  垂れる汗を拭ぐっていると、本日何度目かの溜め息を耳にした。  リビングをちらりと覗けば、彼の雇用主であり作家の式野薫がノートパソコンを前にまた溜め息をついている。  かれこれ一時間、彼女はノートパソコンを見ているが、一向に手は動かないようであった。
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