3 神寄せ

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 半年後には沼は消失したというけれども、(ほたる)はあれ以来一度も、(やしろ)の奥域には足を()み入れていない。またあの時の衝撃が(よみがえ)るのではと思うと、身体がすくんでしまうからだ。 (()じ気づくな。取り返すんだ、たたらを)  前をにらんで、薄明るい森の道を行く。ざわざわ鳴るこずえの音。湿()()った土のにおい。変わっていない、あの日と、なにも。すべてが静まりかえっている。  ゆるい足取りはだんだんと早くなり、いつしか駆け足になっていく。転がるようにして坂を下りきり、生け垣を出るとあの葦原(あしばら)にたどりついた。 「たたら……っ、どこ?」  (ほたる)はぜいぜいと息をきらしながら、ほの明るい原にむかって叫んだ。 「わたしよ、(ほたる)よ。いるんでしょ、お願い、返事してよぉっ」  ――いるよ。  するとはたして、ざざと(あし)が鳴って、か細い声がわずかに()れ聞こえた。  ――いるよ。(ほたる)、こっちだ。 「たたら……なの?」
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