おかえり

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 空から枯れ葉が一枚降ってきた。  ふと見上げれば、近くの街路樹にはもう葉がついていなかった。最後の一葉だったのかもしれないな…と思うと、ふと昔に読んだ悲しい物語を思い出して、なんとも言い難い寂しさを感じた。  沿道には落ち葉がみっしりと敷き詰められて、無機質な道路を明るく彩って、秋の終わりが近いことを告げていた。  今朝の天気予報でも、明日は季節が一気に加速して、真冬並みの寒さとなると言っていた。平野部でも雪がチラつくとのこと。    よりによって明日かよ…  明日は休日で、地元の田舎から母が来ることになっていた。  母に会うのは実に五年ぶりだ。  父のコネで証券会社に就職してから勤続八年。ちょうど三十歳になった年に外資系の会社からヘッドハンティングされ、俺は父の反対を押し切って転職を決めた。  それからすぐに海外勤務となり、五年間のアメリカ暮らし。先月やっと国内営業部への異動が決まって帰国した。引っ越しも終えて、今やっと少し落ち着いたところだ。
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