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アメリカに赴任して一年は、文化や言葉の壁に幾度となく心が折れそうになった。だが、それでも頑張れたのは頻繁に届く母のメッセージに支えられていたからだ。
「そっちはどう?環境変わって体調崩してない?」
「ちゃんと食べてるの?体にいいもの食べなさいよ」
「言葉分かるの?事故に巻き込まれたりしていない?」
俺の事を心配をする電話は決まって夜中にかかってくるので、いつも留守電のメモリーはパンクしていた。
そして二年目になり、俺は青い瞳の彼女ができた。
彼女と過ごす時間が増えると、話せる言葉のバリエーションも増えて、生活が楽しくなった。仕事にも慣れ、大変ながらもやりがいを感じていた。
恋の力というものは、ものすごい原動力になるんだなということを、三十を過ぎて初めて気づかされたのだった。
結局、その彼女とはほんの些細なすれ違いで破局してしまったが、今となってはいい思い出だ。なんとなくだが、いつまでも関係が続かないことを、互いに感じながら付き合っていた気がする。
そうして日本への帰国が決まり、彼女とはそれきりとなった。
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