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『昨日久しぶりに駅で高校の友達にバッタリ会ってさー!
超嬉しかったよー!』
そうやっていつになく興奮気味に話す恋人の大希の話を最初は微笑ましく聞いていた。
高校卒業以来、10年ぶりだって。
親の都合で岩手の大学に行ってて。
向こうで就職したけど、転職を機にこちらに戻ってきたって。
高校の頃に仲が良くてみんなでいつも一緒にいたって。
卒業式終わってすぐにバタバタといなくなってしまったから連絡先知らなかったって。
『家もさぁ、隣町だから使う駅が一緒なんだって。
職場は貴子の会社の近くだよ。
それもすごい偶然だよね。』
『じゃあこれからは頻繁に会えるね。』
『まあネイリストだって言ってたから、時間も休みもそんなに合わないだろうけどね。』
ん?ネイリスト…
『…男性のネイリストって素敵だね。』
『は?女性だけど?』
先ほどまでの微笑ましい気持ちは、一瞬でグレーの霧に覆われた。
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