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「ただ怖い夢を見ただけだから」
夢を見て怖くて泣いているなんて恥ずかしくて、笑ってごまかしていると、リッドが手を伸ばしてわたしの顔を撫でた。
「アンに助けてもらうばっかりだ」
わたしより辛そうなリッドを見てまだ魔法酔いが治ってないのではないかと心配になった。
「リッド、辛いならもう一度やってみる?」
「もう何ともない。それよりアンの方が心配だ」
リッドはマイのこともすごく心配していたし、本当に優しい子なんだと思う。
「わたしなら大丈夫よ」
「俺、正直言うともう帰りたいって思ってた。魔法師になんてなりたくないし、森から離れるのも嫌だったし。おまけに移動魔法は本当に最悪だ。体がばらばらになりそうだった」
リッドは床を見つめてぽつぽつとそう語った。横で見ていても本当に辛そうだったし、リッドにしてみれば無理やり連れて来られた上に、拷問を受けているようなものだっただろう。
「アンがいなかったらここを飛び出してたかもしれない。助けてくれてありがとう。アンに借りを返すまでは俺、ずっとアンのそばにいるから」
まだ熱があるのかリッドの顔は赤くて、銀色の瞳は潤んでいる。
リッドが一生懸命伝えようとしていることが嬉しくて、わたしは思わずリッドを抱きしめたくなってしまった。
「リッドありがとう。わたしはリッドが一緒に来てくれてすごく心強いよ」
リッドの気持ちに答えたくて、精一杯心を込めて言葉にした。
リッドの顔がますます赤くなる。
「リッド、まだベッドで寝てた方がいいよ」
わたしがそう言った時、タイミングを計ったようにロウンが入ってきた。
「ちゃんと寝とかないと星祭りに連れて行ってやらないぞ」
ロウンの言葉にわたしとリッドは顔を見合わせ、同時に聞き返していた。
「星祭りって?」
「今夜この街で祭りがあるらしい。ちょっとだけなら見物に連れて行ってやるよ」
わたしとリッドは両手を打ち合わせた。お祭りに行けるなんて夢みたいだ。
「日が暮れるまでに体力回復しとけよ」
やっぱりロウンも良い人みたいだ。
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