幕間〜ハルジオン〜

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幕間〜ハルジオン〜

魔法士の卵のお迎え役に選ばれるのは初めてだった。お迎え役に選ばれた時から二人は師弟となり、一人前の魔法士になるまで面倒をみることになる。 しかも初めての弟子が、ガネーシャ博士の育てた子だなんてこれ以上の名誉があるだろうか。 ガネーシャ博士は親友でありライバルでもあるロウンの母親だ。数々の魔法書を残してこのハリアールを去った歴代最高の魔法士。 そんな偉大な師の息子であるロウンは、もちろん現在のハリアールでは一番優秀な魔法士だ。 なぜロウンがお迎え約に選ばれなかったのか、不思議に思いはしたものの、僕はその時浮かれていた。 そしてガネーシャ博士の家に送られ、僕の最初の弟子となるアンに出会った。 大きな琥珀色の瞳の小柄な少女は、ガネーシャ博士から離れることを最初こそ渋っていたものの、学院への興味も隠しきれない様子だった。 しかも、突然訪れた転生人の魂を持つ少女を救い、魔法酔いに苦しむ少年を助けた。どちらも見たことのない魔法だった。 まさかと思って尋ねてみれば、最高難度の移動魔法も使えるという。 ガネーシャ博士の家族だとしても、まだ13歳の子どもだ。そうたかをくくっていた。 でも実際にその様子を目にして、僕に教えられることなんてないと思えた。 アンは僕よりロウンに懐いているし、僕よりロウンを信頼している。そりゃ、ふたりはいとこ同士だから、僕よりロウンの方が有利だとは思うけど。 そんないじけた考えから、弱音を吐いた僕に、アンは僕が良いと言ってくれた。 胸の奥がくすぐられたような気持ちだった。妹がいたらこんな感じだろうか。 アンには何でもしてあげたいような気持ちになる。 それに、時々驚くほどおとなびた表情や物言いをするところなんておとなの僕でもドキッとするほどだ。あと二、三年もすればハリアール中の男どもが放っておかなくなるだろう。 ただでさえ、ハリアールは女の子の数が少ない。アンを他の誰かに任せるなんて、絶対ダメだ。 こうなったら僕が頑張るしかない。ロウンに負けてばかりはいられない。 アンに頼られる師匠になって、彼女をハイエナどもから守り抜いてみせる!
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