女王様

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「ハリアールへよく来た。否応無く連れてこられてさぞ気を悪くしたであろう。しかし、そなたたちにしかできないことがある。わたしに力を貸してほしい」 女王陛下の声に、その威厳に圧倒されて、ビリビリと背中が震えた。 女王陛下はわたしたちに食事の席を用意してくださっていて、ただ顔見せするだけにとどまらず、一緒に昼食をとることになった。 次々と運ばれてくる豪華な料理や食器には驚くばかりで、リッドは緊張のためか青くなっていた。 しかもそこで聞かされた話に、さらに青くなりそうだった。 「転生人の話は聞いているな? この王都にも転生人は幾人も現れた。そして中には悪さをする者もいる。一月ほど前、警備兵の捉えた転生人が逃げ出し、ハリアールに隠れた。しかも別の体に乗り換えて潜伏したため、警備兵には見つけ出すことができなかった。魔法士も同様。魂を食いつくし、その人間になりきった転生人を見つけ出すことは困難だ。これがどういうことか分かるか」 もし女王陛下のすぐそばに仕える人を転生人が乗っ取ってしまえば、女王陛下の身が危険に晒されてしまう。 「わたしはもとより、他の民もまた命を奪われる危険がある。そしてこの事件を機に、転生人は人から人へ魂を乗り移ることができるということが分かった。これまでのように安易に放置はできない」 転生人が初めてこの国に現れたのはわたしが産まれる前のことだ。これまで為す術なく放置されてきたが、いよいよ看過できなくなったということだ。 「ガネーシャとアンの両親はハリアールで転生人の研究を行っていた」 突然ガネーシャの名前と、わたしの両親という言葉がでて、思わず女王陛下の顔を真っ直ぐに見てしまった。 女王陛下もまたわたしの方を見ていた。 「その様子ではガネーシャから何も聞かされていないようだな」 うなずくわたしに、女王陛下は怒るでもなく続きを話し始めた。 「最初の転生人は魔塔の召喚した人間だった。その者はこの世界にない技術を伝え、この国の発展に助力してくれた。しかし、どういうわけか召喚していないにも関わらず、その後も転生人が現れるようになった」 「待ってください。最初の転生人はこちらが召喚したというなら、誰かがその体を転生人に差し出したのですか」 「そうだ。それが誰かはいずれ分かるだろう」
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